長期金利の上昇と住宅ローン金利について

大手銀行は1月から住宅ローンの固定金利を引き上げると発表した。なぜ上がるのか?変動金利の影響は?どうなるのか考えてみた。詳しい内容は他の記事を読んでもよくわからないという方が大半なので、なるべく分かりやすく書いてみようと思う(一部は個人の感想です・・・)

一般的に住宅ローン固定金利は、10年長期国債の金利水準を参考に決められている。日銀はこれまで長期金利の上限を0.25%程度に抑えていたが、昨年12月の金融政策決定会合で0.5%程度に引き上げて市場から「金利引き上げ容認だ」とサプライズとして受け止められた。その結果、長期金利が上昇してしまい住宅ローン固定金利も上がってしまったのである。

変動金利は市場の短期金利と連動しているため、長期金利の上昇の影響は基本的にはないだろうとみられている。日銀は短期金利を低く抑えるマイナス金利政策をとっている。この政策はすぐには解除されないと思われているので各銀行は営業戦略上、顧客獲得のために逆に金利引き下げ競争すら行っている感がある。

日銀の金融政策のイールドカーブ・コントロールとは

日銀が長期金利の上限を見直したのは「イールドカーブ・コントロール」の10年債のカーブのゆがみを解消するためで決して金利引き上げではないと黒田日銀総裁が発表したが、市場は金融引締め政策への足掛かりと受け止めた。       ここで、「イールドカーブ・コントロール」とはどのような政策かを考えてみる。昔、私が中学生のころ社会公民の授業では日銀の金融政策は「公定歩合の引き上げや引き下げ」と習った。現在の教科書には「公定歩合」の記載はないらしい。 「イールドカーブ・コントロール」の記載があるかどうか確認はしていないが、この言葉を聞いてすぐわかる人は金融政策に詳しい一部の人だけだろう。

では、「イールドカーブ・コントロール」とは何か?それは長期金利操作のひとつで、2016年9月から始まった「長期金利操作付き量的・質的金融緩和」の柱のひとつ。短期金利のマイナス金利政策は2016年1月から始まったが、マイナス金利政策に加え10年物国債金利を概ねゼロ%程度で推移するように日銀が国債を買入れを行うことで短期から長期までの金利の動きをコントロールすること。

その当時から物価上昇率2%を目指していたが、長引くデフレのため「イールドカーブ・コントロール」にゆがみがでることがなかった。ところが1年前ほどからコロナ禍やロシアとウクライナ戦争などで日本でも物価が上昇してきたので、10年物国債だけコントロールしても残存期間8年~9年物国債の方が国債利回りが高い(0.6%~0.7%)という事態になってきた。このままでは、10年債の利回りを基準として発行する企業の社債発行に悪影響がでるなどの理由で10年物国債の上限金利を0.25%から0.5%程度に引上げたのである。ところが、1月13日に一時0.545%になったと報道されても「ゆがみ」は基本的に解消されていない。

「イールドカーブ・コントロール」のゆがみを解消するには、無理やり抑えつけていた長期金利の上限をさらに引き上げるか(0.75%程度?)か上限そのものの撤廃するしかない。そこにヘッジファンドなどが日銀が政策を変えると確信の下で国債を売っている。海外投資家を中心に国債を借りて「空売り」をしておけば日銀が上限を引き上げるなどして国債の利回りが上昇したときに買い戻すと利益がでるためだ。

国債の金利は市場できまるのが自然な形

長期にわたる利回りの人為的なひずみは投機を誘い国債買入れは財政規律を緩める恐れがあると以前から言われていた。 国債の利回りは本来、市場で決まるものであり、日銀が長期にわたって関与するのは好ましいことではない。利回りに人為的な操作を続け歪みが顕著となれば当然ながら投機の対象となるのは今回の「日銀の懸命な国債買い」が表している。

また、中央銀行の国債買入れは、本来、金融危機などで短期金利市場で資金の目詰りが生じた場合、金融機関に流動性を供給するために行われる緊急措置なはず。長期間継続すれば、日銀のバランスシートが巨額の国債購入により膨れ上がるだけでなく、日銀が国債の安定保有先になり財政規律が緩むことにつながる。

短期金利政策はすぐには影響はでないとの見方が大半であるが、世界的なインフレによる各国の金利上昇政策が加速する可能性もあり、長期金利だけしか上がっていくとは長期的には考えにくい。

それでは、なぜ大手金融機関は変動金利を競争してまで売り込むのか?よく検証してみると変動金利が上昇しても金融機関のリスクが少ないからであり、借手が将来のリスクを背負うからとはあまり大きく言われない。住宅ローンを新規で組むときは返済がしやすい変動金利でもよいと思うが、本来固定金利で借りたときの返済額を支払うつもりで変動金利の返済額の差額は、長期投資で運用して将来の金利上昇リスクに備えるのが賢明だろう。

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