みずほ銀行、消耗戦から「撤退宣言」
住宅ローン競争の主戦場である変動金利の住宅ローンはメガバンクとネット銀行の引き下げ競争が続き、限られた顧客の奪い合いが激しくなってきた。
と前回のコラムでは書かせていただいた。
ところが、「むやみやたらに金利競争の世界に入っていかない」とみずほフィナンシャルグループの木原社長は機関投資家の前に、住宅ローン戦略見直しを発表した。
そもそも、みずほ銀行といえば変動金利の引き下げ競争をけん引する「トップランナー」ではなかったのか!
同行は2年前に変動金利を最低0.375%という低水準に引き下げ、業界を驚かせた。
だが、いたちごっこの金利競争に終わりはなく、競争を仕掛けたみずほ銀行自体も疲弊しつつあった。
金利に極めて敏感な消費者意識
一般には金利上昇が見込まれるときは金利を固定して安心感を得たい人が増えるはずだが、日銀の金融政策の修正期待がくすぶる足元でも変動型がなお優勢だ。
住宅金融支援機構のアンケート調査では22年10月~23年3月に住宅ローンを組んだ人は72%だった。
不動産経済研究所によると22年の首都圏の新築マンションの平均価格は6,288万円とバブル期を2年連続上回った。
家を買いたいと思えば、少しでも金利が低いローンを求めざるを得ないのが現状だ。
特に借入金が3,000万円以上だと目先の金利負担をより意識して変動金利を選択する傾向が大だ。
各金融機関も新たな成長戦略を模索中
福井銀行は4月、最長50年間借入できる住宅ローンを始めた。
金利タイプは変動型も10年以下の期間固定型も選ぶことができ、最低0.3%で2年間金利を固定できる。
担当者は「住宅価格が上昇するもとでも若い世代に借りてもらうためだ」と話す。
西日本シティ銀行も18年から最長50年プランを始めている。
銀行は借り手が職を失うなどの多様なリスクを50年間も背負うことになるが、様々な顧客のニーズに柔軟に応えるため商品設計を試行錯誤している。
ライバルが多く競争の激しい「レッドオーシャン」での戦いには限界がある。銀行はどこに自らの強みを見出し、成長につながていくのか。新たな成長戦略の見直しを模索している。