住宅ローンに関連する税制優遇として、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)があります。この控除制度では、一定の条件下で二重適用が認められるケースがあります。

定額減税の二重取りとは?
2024年度の税制改正により導入された「定額減税」は、納税者の税負担を軽減するための措置として注目されています。しかし、最近「定額減税の二重取り」という問題が話題となっています。
定額減税とは、所得税や住民税の納税者に対して一定額を減税する制度です。政府が国民の経済的負担を軽減する目的で実施しており、特定の年に限り適用されることが一般的です。対象者には、給与所得者や個人事業主などが含まれます。
「二重取り」とは、本来1回しか適用されないはずの定額減税を、何らかの手続きミスや制度の抜け穴を利用して、2回以上適用させる行為を指します。具体的には、
- 複数の会社から給与を受け取っている場合
- 給与を受け取る会社ごとに減税措置が適用される可能性がある。
- 転職した際に二重適用されるケース
- 転職前後の勤務先で、それぞれ減税が適用されてしまう場合がある
住宅ローン控除に関する二重取りが認められるケース
住宅ローンに関連する税制優遇として、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)があります。この控除制度では、一定の条件下で二重適用が認められるケースがあります。
- 夫婦でペアローンを組んでいて住宅ローン控除をそれぞれ適用するケース(容認されている)
- 夫婦がそれぞれの収入に応じて住宅ローンを借りている場合、それぞれの所得に対して住宅ローン控除を適用することができます。
- ただし、共有名義の場合は持分割合に応じた控除しか受けられないため、二重取りにはなりません。
- 転職や異動による再適用のケース(注意が必要)
- 住宅ローン控除は転職後も適用可能ですが、新しい勤務先で再度控除を申請する際に、前職での適用と重複しないように注意が必要です。
- 買い替え時の二重適用のケース(条件付きで認められる)
- 旧住宅と新住宅のローン控除を同時に受けることは基本的にはできませんが、一定の条件(例えば、旧住宅がまだ売却されておらず、両方のローンを負担している場合など)を満たすと適用可能な場合があります。
- 住民税と所得税の両方で過剰控除されるケース(防止が必要)
- 住宅ローン控除は所得税の控除額が住民税にも適用される場合がありますが、計算ミスにより二重で控除されることがないよう注意が必要です。
防止策と対応方法は?
政府や企業側でも二重取り防止策を講じていますが、納税者自身も注意が必要です。
- 年末調整時に申告内容を正確に記入する
- 転職や副業などで複数の給与所得がある場合は、各勤務先に申告を行い、適正な減税措置を受ける。
- 住宅ローン控除の適用条件を確認する
- 夫婦での控除適用時の持分割合や、買い替え時の適用条件をしっかり確認する。
- 企業側の管理強化
- 企業は、従業員が他の勤務先でも減税を受けていないかを確認する仕組みを導入する。
- 税務署のチェック
- 税務当局も二重取りの可能性を精査し、必要に応じて修正申告を求める。
二重取りについては、会社(所得税)、地方公共団体(住民税)がそれぞれの情報に基づき適正に判断している場合には、令和6年7月 12日閣議後記者会見で当時の鈴木財務大臣は「企業や地方公共団体の事務負担に配慮することも必要である」として二重取りで発生した分は返還など求めることはない方針を表明しました。
ただ、税務署や地方公共団体が事務ミスや返還方針を理解しないまま追徴課税や修正申告を求めるケースも発生する可能性は否定できず、企業の担当者や税理士などの専門家が個別で判断するしかないと言えます。