Contents

動き始めた「金利ある世界」預金金利や財政などに影響

日銀は物価高の影響を受け政策を修正し、金利が1%まで上昇することを事実上容認した。長期金利は10月7日には0.803%で2014年1月以来の0.7%超えとなった。

金利の上昇は様々な経済に影響する。大口定期預金の店頭金利は0.009%で22年3月の0.002%から4.5倍の水準をつける銀行も出てきた。銀行の貸出金利も上昇してきており中小企業には厳しい環境となってきている。また、財務省は24年度予算の概算要求で想定金利を1.1%から1.5%に引き上げた。国債の発行に伴う負担増につながる。個人の生活に最も影響ある金利と言えば「住宅ローン金利」だ。住宅ローンには契約時から金利が動かない「固定金利型」と半年おきに金利が見直される「変動金利型」がある。固定金利型の金利は長期金利と連動しているため、優位性が薄れている。

変動金利型の住宅ローンにはいつ金利上昇に波が押し寄せるのか

世界の中央銀行はインフレに対応するため金利を引き上げてきた。FRB(米連邦準備理事会)は政策金利を5.25%~5.50%と22年ぶりの水準に引き上げた。ECB(欧州中央銀行)は主要政策金利を4.25%としている。日銀は短期金利をマイナス0.1%とするマイナス金利政策を続けており、世界でも突出している。現在マイナス金利政策を続けているのは日本とトルコだけだ。

「マイナス金利がいつ解除されるのか」が市場の関心を集めている。9月に日銀の植田総裁がマイナス金利の解除を巡る発言をしたことで緊張が走ったが、円安を強くけん制した政府と歩調を合わたとの見立てだった。日銀は2%の物価目標の達成まで金融緩和を継続するとしており、マイナス金利の解除も物価に左右される。 市場関係者に政策修正時期を問うOUICK月次調査(8月)では「24年4月以降」との回答が一番多かった。物価次第では年内の修正もありうるが、日銀内からは「来年1月~3月ごろ」とする意見も挙がる。

金利上昇の対策は住宅ローン残高を減らすこと

変動型金利の住宅ローンは半年ごとに金利を見直す。2016年の日銀のマイナス金利政策導入後は、銀行間の競争激化により新規貸出金利は一段と低下し大手銀行では年0.3%~0.4%、ネット系では0.2%~0.1%台も見かける。団体信用生命保険が0.2%程度と考えると利益を度外視、赤字覚悟の金利水準で過去最高のレバレッジで住宅を購入できる環境となっている。

ただ、変動型金利にも先高観も出始めていることで、「変動金利型」への備えも考えなければならない。変動型を借りている人は7割といわれてるので、大半の人は金利が上昇しても家計が対応できるかどうかを点検することが大切だ。ではどのような手順で家計の対応力を確認すればよいのか。まず必要なのは、適用金利が上昇したときに毎月の返済がどのくらい増えるのかを知ることだ。バブル経済後の変動型金利の適用金利をみると、年2.0%台半ばだった期間もありその水準を想定することだ。

適用金利が上昇したらどのような対策があるのか。毎月の返済額が1万~3万円増えても余裕があるなら返済は可能だが、利息が増えているぶん返済総額は増えやすい。負担を抑えるには住宅ローンの残高を減らすことが有効だ。金利が上昇した際に一定の金額を繰り上げ返済すれば元金と利息負担が減り、毎月の返済額を金利上昇前と同じ水準にできる。金利が0.5%上昇した場合には約240万円を繰り上げ返済すると毎月の返済額を維持できる。2%の上昇なら約840万円が必要と言われているが、その余裕資金はどこから捻出するのかという別の問題もある。繰り上げ返済に充てたり、ローン残高と自宅の時価との差額を埋めたりするだけの資金がなければ、金利上昇への家計の余力は乏しい。

「5年ルール」「125%ルール」のリスク

一般的に半年ごとに見直す変動型型の適用金利が上昇しても、借りている人の毎月に返済額がすぐに増えることは少ない。多くの金融機関のでは、元利均等返済で借りている場合は毎月の返済額の見直しを5年ごととする「5年ルール」を設けているからだ。返済額を引き上げる際には上限を25%までとする「125%ルール」も導入している。変動型の利用者にとっては毎月の返済額が急増することが避けられ、返済を続けやすい利点がある。

ただ、リスクもあることも。利払いの負担が免除されるのでなく、毎月の返済が一定のため、適用金利が上がると毎月返済額のうち利息の支払いが増える一方、元金の返済の充てる割合は減って元金の返済が遅れる。125%ルールで返済額が抑えられると、抑えられた分が次の5年間の返済額に反映される。利息も含めた総返済額はルールがない場合より増えやすい。過去バブル期に急激に金利が上昇したときには、未収利息が発生したこともあった。

また、ソニー銀行、PayPay銀行、SBI新生銀行、au自分銀行は「5年ルール、125%ルール」は設けておらず、半年ごとの金利見直しで毎月の返済額が変わるのに注意しなければならない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA